盗まれたゴッホの絵画はその後どう処分するのか、実際に盗んだ人物が語りました。(オランダ)

1975年以降、ゴッホの絵画は世界中で少なくとも34点が盗まれていると言われています。
3月30日にオランダのシンガー・ラーレン美術館でビンセント・ファン・ゴッホ氏の「春のヌエネンの牧師館の庭」というタイトルの絵画が何者かによって盗めれる事件が起きました。
この盗まれた絵画はその後どうなり、何に利用されるのか?過去に2枚のゴッホの絵画を盗み刑務所に入っていた男性が盗まれた美術品のその後の使われ方を語ります。
今回の事件は、ダーラム氏が行った犯行を模倣した物だと専門家は考えている
【シンガー・ラーレン美術館で盗まれたゴッホの絵画】by:afpbb.com
監視カメラの映像では、美術館のガラス扉を壊して侵入し、その後ヴィンセント・ファン・ゴッホの絵画を抱えて外に出てきた男の姿をはっきりと残していました。
その映像を見たオクターブ・ダーラム(Octave Durham)氏は、3月30日の事件に関してインタビューに答えました。ダーラム氏は以前オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館から2枚のゴッホの絵画を盗んだ人物で、2004年に有罪判決を受け、25か月以上の服役をした人物です。
尚、ダーラム氏が盗んだ2枚の絵画は2004年の逮捕時すでに彼の手元には無く、12年後の2016年にイタリアの麻薬密売組織のメンバーの自宅の台所から発見されてゴッホ美術館に返却されています。
オランダの警察は今回の事件の捜査についてのコメントを現在避けている状況です。しかし、美術品犯罪探偵のアーサー・ブランド氏は、今回の事件がダーラム氏が起こした窃盗事件と幾つか似ている部分があると語ります。
I was just informed that Aydin Dikmen passed away. Aydin sold hundreds of icons and mosaics looted from Cyprus, including the mosaic of St. Mark that I recovered in 2019. The fight is over. Rest in peace. pic.twitter.com/lRcl7rUe0Z
— Arthur Brand (@brand_arthur) April 15, 2020
このブランド氏は、今まで数多くの盗まれた美術館作品の回収を手伝ってきており、今回の盗難事件に関しても警察の捜査に協力を行っています。
彼が似ている点として挙げたのが、一つ目は迅速な侵入と回収が行われており、ハンマーを持った男性が5分以内に犯行を行っている点、もう一つが盗まれた盗まれていた絵画に描かれていた内容がダーラム氏が盗んだ作品と同じゴッホの父が牧師を務めていた教会が描かれていた作品だった点だそうです。
この事から、ブランド氏は今回の事件はダーラム氏の犯行をリスペクトしており、犯行を模倣しているのではないかと考えていると言います。(ちなみに3月30日の犯行当時ダーラム市は入院中だった事が確認されている為、ダーラム氏は潔白である)
この話を受けたダーラム氏は今回の事件の模倣犯説をあまり好ましく思っていない様です。「人々はこの犯人はオッキー(ダーラム氏の愛称)になりたがっていると言うが、私には全くわからない。私だったらこんな風にはやらない」とコメントしました。
インタビュー時に映像を見たダーラム氏はまず、「彼の姿はプロではありません、プロなら真っ黒な服を着て泥棒を行うのに、彼はジーンズ姿でNikeのスニーカーを履いている」とコメントしており、自分を模倣したにはあまりにも犯行方法が稚拙であるかの様に述べています。
盗品を売る場所を知っているから盗んだわけではない
【ダーラム氏が盗んだゴッホの絵画】by:nytimes.com
盗まれた絵画はその後どうなるのか?現在シンガー・ラーレン美術館で盗まれた絵画は十数年間にダーラム氏が盗んだ2枚の絵画と同じ様な状況にあります。
果たして、世間で盗まれた事が話題となっている絵画をお金を出してまで買う人間がいるのでしょうか?
また、テレビや小説の世界である様な、盗まれた美術品を売買でき、泥棒が換金できるような闇オークションと言われるようなものは存在するのでしょうか?
ダーラム氏は、「私の場合、盗む機会があったからやっただけだ」と語ります。
「博物館の窓が簡単に壊せそうだという事に気づいたので犯行を行った。元々、盗めば買い手がいるからやったという訳では無く、むしろ犯行時にどこに買い手がいるのかも何も知らなかった。実際の話、盗んだ後はどこかで売るのか、それとも自分自身に何かしらの問題が発生した際にこの絵画を利用して警察や保安官との交渉材料に使おうか、どっちでもいいなと思っていた」
実際には何十億円の価値がある絵画でも、盗品をその金額に換金する様な手段は存在しないそうです。
ダーラム氏が盗んだ絵画は司法取引の交渉材料として使われた
彼の幼少時、犯罪者の隣人が麻薬密輸事件で逮捕された際に、司法取引を行いゴッホの絵画と引き換えに罪を軽くしていた事をずっと覚えていたそうで、ならば犯罪者にゴッホの絵を買い取ってくれるのではないかと考えたそうです。
しかし、その事で絵画を提供しようと話を持ちかけた2名の犯罪者は、取引が成立する前にどちらも殺害されてしまったと言います。
「私は信仰が深く、迷信的です。私が盗んだ絵画2枚は呪われており、私はこの絵には関わりたくないと思いました。」
最終的に絵画の売却を行えたのははナポリの麻薬組織カモッラのリーダーであった人物でした。
その後ダーラム氏はアムステルダムからスペインに逃亡したものの、2003年に南部のリゾート地マルベーリャで逮捕される事になり、その後犯行当時にゴッホ美術館に残してしまった野球帽とのDNA鑑定の結果が一致し、有罪判決が下される事になりました。
判決後もダーラム氏は絵画の所在についてを明らかにする事を拒否していましたが、十数年の月日が流れイタリアの警察が麻薬組織カモッラの調査を行った際に、リーダーが司法取引の為に絵画の所有を手紙で自白し、母親の自宅の台所からダーラム氏が盗んだ2枚の絵画が発見されました。
盗んでみたものの、実際に盗品は美術品本来の価値にはならない
by:unsplash.com
オランダ検察庁の検察官であるウルスラ・ヴァイツェル氏は一般的に美術品は、窃盗者が車を盗むのと同じような感覚で盗まれると言います。
「作品に対しての情熱的な思いによる犯罪ではない限り、たいていの場合動機は金儲けをしようという考えです。プライドやステータスの為に自分で壁に飾る為に窃盗を犯す人間など見た事がありません。普通はお金の為です。あとは何か必要な場合に備えて保管する為ですね。」
実際、美術品犯罪探偵のアーサー・ブランド氏が手掛けた事件の多くの泥棒は犯行当初盗んだ美術品はどこかで販売出来ると考えるものの、その後すぐに合法的な買い手などいない事を知ると言います。
「半分以上がそのケースでした。盗まれた絵画でも名画を壁に飾っておきたいと思っている買い手がいると信じている泥棒がいまが、実際そんな人物は映画だけの話す。盗んだ後に作品が売れなかった時に初めて目が覚めるのです」
そうなった時に絵画はダーラム氏の様な形で犯罪者に提供される形になります。多くの場合は実際の価値よりもはるかに低い価格で提供される事になる。とブランド氏は言います。
ブランド氏の経験上、盗品等による裏社会にある美術品は、正規の美術品価格の相場の10%程度の価値になると推定している。つまり、ゴッホの絵画が正規の市場で1000万ドルで取引されているとしても、犯罪者の間では約100万ドルでの取引価格になってしまうのです。
また、ダーラム氏のケースによると、その10%価値よりも遥かに低く、2.5~5%程度での取引であったと言います。
価値の低い美術品はその後返ってくる可能性は低い
by:unsplash.com
アムステルダムだけでも年間多くの美術品が盗まれており、犯罪者はその作品を担保にしたり、司法取引の交渉材料として美術品を手に入れる事があると言われています。
「例えそれが違法な投資であっても、結果的にそれが犯罪者が将来的に自分の罪を軽くするための投資になる」と言います。
盗まれた絵画が再び発見されるまでは数十年掛かるケースが多いと言われていますが、全体の割合から考えると実際に回収された作品は非常に少なく、全体の10%程度に満たないそうです。
また、ゴッホの絵画のように数百万ドル以上の価値のある美術品などの場合は交渉材料に利用される可能性が高くいので再び発見される可能性は高いものの、価値の低い作品は交渉材料とならない為に処分されてしまっている可能性が高いと言われています。
ダーラム氏は最後に18年前の盗難を若気の至りだと述べ
「銀行強盗とは違う。人々は本当に芸術を愛しており、それを盗めば人々は怒り、傷つく事を理解している。自分自身にはまだその感情自体はまだ無いが、理解は出来ている」
とコメントしました。
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